落語「道具屋」でも、与太郎は持ち前の愛すべき間抜けぶりで大活躍!

与太郎噺

与太郎噺では、欠かすことができない演目「道具屋」

長年ビジネス社会に身を置いていると、何事も効率優先な考え方をしてしまいがちです。

 

そんな緊張した時を忘れようと、落語を聞いていると、やさしい人ばかりが生きているんだな、とほっこりしてしまいます。

 

与太郎噺の定番「道具屋」では、定職を持たない与太郎に、叔父さんが副業でやっている道具屋をやらせてみることにしました。

 

露店の道具屋を始めた与太郎と、訪れる客とのとんちんかんなやりとりが楽しくて、時を忘れてしまいます。

 

落語ならではの世界なんですが、与太郎さんの余裕のあるボケぶりには憧れにも似たものを感じますね。

 

 

道具屋の聞きどころ

与太郎が始めた道具屋が商う品が面白い。

 

道端に雑貨を広げて売る、今風にいえばフリーマーケットでしょうか。

 

叔父さんから聞いていると言って、先に店を出していたおじさんが、与太郎にいろいろと教えてくれます。

 

ただ、そろえて商うものはガラクタばかり。

火事場で拾ってきたノコギリ、
すぐ首が抜けてしまうお雛様、
はくと破けてしまう股引き、
踊りや芝居で使う小刀に見せかけた木刀、などなど。

 

ノコギリを見せろと訪れた客に、火事場で拾ってきたと言って逃げられてしまいます。

 

買わずにその場を去っていく客を「小便」という、と教えられます。

 

股引きを買いに来た客に、「小便はできないよ」と伝えると買わずに帰ってしまう。

 

与太郎の間抜けぶりがおかしくて、思わず笑ってしまいます。

 

 

道具屋のあらすじ

神田三河町の大家である杢兵衛さんの甥の与太郎は、二十歳も過ぎたのに働かないで遊んでばかりいます。

 

母親から「何か商売でも教えてやってくれ」と頼まれていました。

 

与太郎自身も「商売をやってみた」というのです。
「伝書バトを買ってね、あたいのところへ戻るよう訓練するんだよ。」

「そうすれば、他人に売っても自分のところへ戻ってくるだろ!それを繰り返して大儲け!」。

 

「おかしなことを考えるやつだな。それでうまくいったのか?」

 

「いいや、放してみたんだけど鳥屋に帰っちゃった!」

 

心配した杢兵衛さん、ほうっておくわけにもいかず、自分がやっている副業をやってみないかと、提案します。

 

「知ってるよ!頭に『ど』の字がつくだろう?」
「なんだ知っていたのか」
「うん!泥棒!」
「バカだな。“ど”がついてたって道具屋だ!」

 

商売のコツを教えて、商売道具一切を持たせて商いに行かせます。
道具屋といっても品物はガラクタばかり。

 

教えられてやってきたのが、蔵前の伊勢屋という質屋の裏。
煉瓦塀の前では、天道干しの露店が並んで商いをしています。

 

「神田三河町の杢兵衛のところからきた与太郎さんだ」と自己紹介をして仲間に入れてもらいました。

 

最初の客は大工の棟梁

釘抜を閻魔、ノコが甘い、などと符丁で言われるからわからない与太郎。

火事場で拾ったノコだと知ると怒って帰ってしまいます。

「ほれ見ろ、小便されたじゃねえか」と叔父さんの知り合いの同業者。

 

次の客は隠居然とした老人

唐詩選の本を見れば表紙だけ、万年青(おもと)の鉢だと思ったら縁のとれたシルクハット。

毛抜きを見つけて、ひげを抜き始める始末。
「さっぱりした。伸びた時分に又来る」と帰ってしまいます。

 

股引きを見せろと訪れたお客

「断っておきますが、小便はできませんよ!」
「ちゃんと割れてるじゃないか?」
「割れてたってダメです!」
また、帰られてしまいます。

 

今度はやけに威張った地方出の壮士風の客

「おい、そこの担当を見せい!」
「タントはありません」

刃を見ようとしますが、さび付いているのか抜けません。
与太郎も手伝って、両方から息を合わせて引き合います。

「抜けないな」
「抜けません」
「どうしてだ?」
「木刀です」

「木刀なのになぜ手伝う?」
「顔を立てました」
「顔なんかいい。抜けるものはないのか」

「お雛様の顔が抜けるのがあります」

 

このサゲで終わることもあれば、時間があれば噺はまだ続きます。

 

 

ちょっとだけ解説

古くからある小話を集めて、一席の落語に仕上げた噺です。
なので、どこでも終わることができる噺であり、オチもたくさんあります。

 

客が笛の穴に指を突っ込んで抜けなくなりました。
与太郎は、ここぞとばかりに高い値を吹っ掛けます。

「おい、足元を見るな!」
「いえ、手元を見ました」

 

笛が抜けなくなったので買うことにした客が、持ちあわせがないので与野党は自宅まで連いていきます。

 

客がなかなか出てこないので、与太郎は格子の間から覗き込んで督促しているうちに、首が格子にすっぽりハマってしまって抜けなくなってしまいます。

困った与太郎は「この窓はいくらです?」

 

いろんなパターンがあります。
それぞれの噺家さんの道具屋を聞き比べるのもいいですよ。