落語「火焔太鼓」は5代目古今亭志ん生の十八番だった滑稽噺

rakugo-kaendaiko 滑稽話
落語「火焔太鼓」は5代目古今亭志ん生の十八番だった滑稽噺

この記事では古典落語の演目「火焔太鼓」を紹介します。
商売下手な古道具屋の主人が、埃だらけだった古い太鼓を大名に売りに行くという滑稽噺です。

 

「火焔太鼓」といえば古今亭志ん生と言われるほど、五代目志ん生の十八番演目です。
てっきり東京の噺家だけが演じているものだと思っていたのですが、大阪の高座でも上方風の「火焔太鼓」が高座にかけられています。

 

聞き比べてみる楽しみがありますよね。
今回は江戸落語で紹介いたします。

 

 

落語「火焔太鼓」の聞きどころ

商売下手な古道具屋の主人甚兵衛さん。
それを呆れながらも見守っている口達者なおかみさんの小言が笑えます。

 

売れるものを売らないで、売らなくいいものを売ってしまう、とおかみさんから小言をいわれるほどのおおらかな人物として演じられます。

 

古びた太鼓を仕入れてきて又小言

今日も売れそうもない古びた太鼓を一分で仕入れてきて、おかみさんの口から出る小言がおもしろおかしく表現されます。

 

「おまえさんが古いものを買ってきて売れたためしがあるかい?」
「この間もそうだったじゃないか!平清盛のしびんての買ってきて大損したじゃないか!」
「巴御前の鉢巻き、頼朝の五歳の時のしゃれこうべ」などと続きます。

 

古びた太鼓の積もった埃を払うと

親戚から預かっている店の小僧・定吉に太鼓の埃をはらうよう命じます。
埃を払うと「ドドン、ドンドン」と太鼓の音がします。

 

その音が、籠に乗った通りすがりの大名の耳に入ります。
家来の侍が太鼓を買い求めたいと訪ねてきます。
主人とその家来のやりとりも軽妙で楽しく聞けます。

 

古びた太鼓が300両

おかみさんの心配をよそに、主人は太鼓を売る為に大名屋敷を訪ねます。
ここでも家来の侍とのやりとりが面白おかしく演じられます。

 

埃だらけだった太鼓は、実は火焔太鼓といって名器とのこと。
300両で売れました。
信じられない古道具屋の主人は、50両ずつ差し出される小判を見て喜ぶやら驚くやら。
その場面も演じる噺家さんの芸の力の見せどころとなります。

 

驚き喜ぶおかみさん

喜び勇んで店へ戻り、おかみさんへありのままを伝えますが信じるはずがありません。
主人は自慢するように、50両ずつ懐から小判を取り出し見せます。
驚き喜び感心するおかみさんの様子も、面白おかしく演じられます。

 

最後のオチになります。
「やはり音の出るものがいい!次は半鐘を仕入れよう!」
「半鐘はダメだよ!」
「おじゃんになるから!」

 

演じる噺家さんによって、オチが変わることもあります。

 

 

落語「火焔太鼓」のあらすじ

 

江戸時代は商材によって、それぞれの集まりができて商売をしていたそうです。
浅草かっぱ橋道具街、秋葉原電気街、大阪千日前道具屋筋、大阪日本橋電器屋商店街(デンデンタウン)などもその名残でしょうか。

 

商売下手を責められる古道具屋の主人

「どうしてお前さんはそんなに商売が下手なの?」
「何がだよ!」
「何がじゃないよ!今の客、何だって逃がしちゃうのよ!」

 

「今入ってきたお客“この箪笥いい古いが箪笥だなあ“と言ったら、ええ、私の店に6年もありますなんて言ってしまって!」
「6年も売れ残っているのをバラしているようなもんじゃないか!」

 

「そうだと思えば売らなくてもいいものを売ったりして!」
「この間も向かいの米屋の主人が遊びに来た時だよ。」
「座敷に置いてあった長火鉢をみて“甚兵衛さん、この火鉢いい品だね“と言われ、じゃあ売りましょ  うかって売ってしまったじゃないか!」
「おかげで冬のさなかに、うちは寒くてしようがないじゃないか!」

 

おかみさんに仕入れてきた太鼓を見せろと言われ

「けさも市へ行ってきたんだろう?いったい何を買ってきたの?」
「太鼓?」
「太鼓ってぇ物は際物だよ、太鼓を使う行事がある時でないと売れないよ!」

 

「お見せなさいよ!」
「まあ~、汚い太鼓じゃないか!いったいいくらで買ったの?」

 

古びた太鼓の埃を払うと

小僧の定吉が埃を払うと「ドンドンドンドン、ドドン、ドン」と音がします。

 

「今、太鼓をたたいていたのはその方の店か?」と、侍が訪ねてきます。
「籠で通行中の殿が太鼓の音を聞いて、”その太鼓を見たい“」と言っている。
「ことによってはお買い上げになるやもしれんぞ!」

 

大名屋敷に持っていくことになりました。

 

大名屋敷を訪ねると300両で売れました

主人を心配するおかみさんにくぎを刺され、太鼓を背負って大名屋敷を訪ねます。
「殿様、汚いと怒っていませんでしたか?」
「いや、お買い上げになる!」
「ほんとうですか!はあ~!」
「気の抜けた返事だな、売らんのか?」
「いえ、売ります売ります!」

 

「300両で買い受けたいと思うが、どうじゃ?」
「うおぉ、300両!300両ください!」

 

埃だらけの太鼓は、「火焔太鼓」といってこの世に一つ、二つとしかない名器だとか。
見事に商いが成功しました。

 

心配しているおかみさんに300両を見せると

喜び勇んで店にもどります。

 

「お前さん!まあ顔色かえて、しくじったんだろう。すぐお逃げ!」
「まあ、落ちつけ!」
「お前さんが落ち着きなよ!」

 

「あの太鼓はたいへんな太鼓ってんだよ!」
「300両で売れた!」

 

「ほんとに300両で売れたんだよ、ここに懐に持っている!」
「うそだろう、ほんとに持ってんだったら見せろ!このバカ!」
「よ~っし、見せてやる!」

 

「50両だ!100両だ!ほれほれ150両だ!200両!」
「ああぁ~お前さん商売上手!」
「そら、250両、300両だ!」

 

 

ちょっとだけ解説

rakugo-kaendaiko

火焔太鼓は雅楽用に使われる太鼓です。
太鼓の周囲にたくさんの火焔が装飾されているのでそう呼ばれています。
先端には日輪を表す金色の飾りがついています。
かなり大きなもので、宮中の行事や神社の式典などで用いられています。