落語の演目は高座にかけられることが少ない噺も含めると、500以上はあると言われています。
江戸時代中期から明治時代に作られた演目は古典落語と言われ、同じ演目を多くの落語家さんが演じます。
それぞれに工夫を加えて高座にかけられますが、ベテラン落語家さんから新しい落語家さんへと受け継がれる、日本の伝統話芸です。
東京でも上方でも演じられる同じ演目もあります。
今回は、東京でも上方でもおなじみの「まんじゅうこわい」を取り上げます。
落語「まんじゅうこわい」は東京と上方では構成に違いが・・・・・
東京落語では、暇をもてあます若い者が集まって嫌いなもの、怖いものを話題にして時を過ごすストーリーになっています。
そこへ「怖いものなどあるものか」と息巻く男が登場します。
「ほんとうに怖いものはないのか」と問い詰められ、「ほんとうは饅頭が怖い」と白状してしまいます。
一方、上方落語では暇をもてあます年配の男性が集まります。
同じように、それぞれが怖いもの、好きなものを取り上げていくのですが、「狐に化かされた話」や「女の幽霊話」が前段に入るため、40分ほどの大ネタとなっています。
落語「まんじゅうこわい」の聞きどころ
「寿限無」、「時そば」、「平林」と並んで、誰でも一度は聞いたたことのある演目ですね。
子供向けの絵本にもなっているほど、高座にかけられることの多い演目です。
前座話として若手落語家が修行時代に取り組むことが多い演目です。
とはいえ、大御所やベテラン噺家も晩年の高座にかけた噺でもあります。
上方落語では、狐に騙される話や怪談めいた話が織り込まれ、まんじゅうこわいの場面に入ります。
聞き比べてみると、その違いと面白さがわかります。
ほんとうは好きなのに、まんじゅうを怖がることで逆に手に入れようとの発想が、落語の世界でしか実現しない噺ですね。
落語「まんじゅうこわい」のあらすじ
「まんじゅうこわい」には、いろいろなバージョンがあります。
上方落語で織り込まれる、狐に騙される話や怪談話になるくだりは、ひとつの噺として成り立っているほどのものです。
一般的なあらすじを紹介します。
長屋で暇をもてあましている若い者が数人集まり、好きなもの怖、怖いものについてバカ話をしています。
「ヘビが怖い」
「ムカデが怖い」
「クモが怖い」
「アリが怖い」
ワイワイ、ガヤガヤとやっていると
「人は胞衣(えな)、つまりへその緒を埋めた土の上を初めて通った生き物を嫌いになる、という言い伝えがある。」
「なんでそんなものが?と思うようなものを怖いと思うやつがいるのかもしれないな」
そんな話を黙って聞いていた熊さんに
「おまえはどんなものが怖い?」
「ない!」
なんど聞いても
「ない!」
「ほんとうになにもないのか?」としつこく問いただすと、
「ほんとうはある・・・・・」
「それはいったい、何なんだ?」
「実は・・・・・まんじゅうが怖い!」
一同が驚いていると、
「怖い!怖い!思い出したら気分が悪くなった!」と隣の部屋で寝込んでしまいます。
常日頃から熊さんのことを良く思っていない一同は、悪知恵を巡らせます。
「まんじゅううと聞いただけであんなに震えだすのだから、本物を見せたらひっくり返るんじゃないか?」
「死んじまったらどうしよう!」
「まんじゅうで殺してあん殺だ!」
などと言いながら、いろんな種類のまんじゅうを買ってきて、枕元におきました。
隣の部屋から声をかけます
「具合はどうだい?」
「うわっ!だれがこんなものを!怖いよ!」と叫びながら、ムシャムシャと口いっぱいほおばり始めます。
隣の部屋からのぞき見していた一同は、だまされたと気づきカンカン。
「おい!ほんとうは何が怖いんだ?」
「今度は濃いお茶が一杯こわい!」