「芝浜」は年末になると演じられることの多い人情噺です。
落語ファンなら一度は聞いたことのある演目でしょう。
噺のヤマ場は大晦日の設定になっていますので、12月に演じられると聞く人の心に響きます。
演じる噺家さんにはそれぞれの工夫があり、見せ場になる夫婦の会話にはホロリとさせられる秀逸の人情噺です。
古典落語の名作と言ってもいいでしょうね。
落語「芝浜」の聞きどころ
登場人物は、主人公の魚屋とその女房。
そして大家さん。
主人公は腕のいい魚屋ですが無類の酒好きです。
ある朝、女房から急き立てられしぶしぶ商いに出かけところ、芝浜で大金が入った財布を拾います。有頂天になった主人公の男は、酒を呑み酔いつぶれてしまいます。
大家さんに相談した女房の機転で、「それは夢だ!」と諭され信じ込みます。
男は自分の愚かさに気づき、改心し商いに精を出すようになります。
その後自分の店を持つまでに成功します。
三年後の大晦日、女房は正直に夢での出来事は現実だったことを伝え、勝五郎に詫びをいれます。
勝五郎は「いや、おまえのお陰でここまで来れた」と、女房に感謝し成長の跡を見せます。
多くの噺家さんが演じる人情話ですが、それぞれを聞き比べる楽しみもありますよ。
落語「芝浜」のあらすじ
ひょんなことから酒に呑まれるようになってしまい、商いにも出かけなくなった魚屋とその女房が登場します。
女房に懇願され、しぶしぶ商いに出かけた魚屋は一服していた芝浜で財布を拾いました。
急ぎ家へ戻り中身を確認すると、驚くほどの大金です。
これで毎日商いに出ずとも酒が呑めると、また酔いつぶれてしまいます。
女房は大家さんに相談します。
「拾ったお金を使ってしまうと罰せられる」と、役所へ届け出るよう勧められます、
このままでは亭主はダメになってしまう、と考え機転を利かせます。
けなげな女房の大芝居!
「商いもせずお金が欲しいなどと考えるから、つまらない夢を見るんだよ!」と説得する女房。
夢だったのかと自分を恥じ、男は商いに精進するようになります。
ほんとうは真面目な亭主!
主人公の男は、女房の説得で自分のだらしなさに気づきます。
もともと腕の良い魚屋です。
お付き合いのあったお客さんを訪ね、以前のような商売が戻ってきました。
3年後には自分のお店を!
心から反省し愚かさに気づいた主人公の男は、早朝から仕事に向かうようになりました。
一度離れた客足も戻り、自分の店を構え人を雇うまでになりました。
拾った財布の一件は夢ではなかった!
3年後の大晦日、夫婦はあの頃を振り返りながら、何事もなく迎えられる正月を喜びあいます。
女房は3年前に芝浜で拾ったお金は夢ではなかった、のだと告白します。
役所へ届け出たお金は、紛失者不明であったため手元に戻っていました。
だらけた生活に戻っては、と亭主には内緒にしていたのです。
長い間嘘をついていたことを詫びると、主人公の男は一瞬怒りの様子を見せますが、「夢にしていてくれてありがとう!」と女房に感謝の気持ちを伝えます。
あの時の金を手にしていたら、今の幸せはなかったに違いないと思い直したのです。
考えオチ
自分の力で成功を手にした亭主に、女房は3年ぶりに酒をすすめます。
「久しぶりにどう?」
大きな器で酒をいただこうとした主人公の男の手が止まります。
「いや、やめとこう!また夢になるといけねえ!」